マンション売却で「仲介手数料無料」と聞くと、かなりお得に感じます。ただし、無料=必ず得、とは限りません。
重要なのは「なぜ無料なのか」「無料にした代わりに売却価格や販売方法で不利益が生じないか」です。
国土交通省によれば、仲介手数料は法律で上限額が定められているだけで、上限以下に値引きしたり、無料にしたりすること自体は可能です。
以下、マンション売却を前提に整理します。
マンション売却の仲介手数料の相場
一般的なマンション売却では、400万円超の部分について、仲介手数料の上限は実務上よく使われる速算式で
売却価格 × 3% + 6万円 + 消費税
となります。
例えば、
| 売却価格 | 仲介手数料上限(税込)の目安 |
|---|---|
| 2,000万円 | 72万6,000円 |
| 3,000万円 | 105万6,000円 |
| 4,000万円 | 138万6,000円 |
| 5,000万円 | 171万6,000円 |
| 7,000万円 | 237万6,000円 |
| 1億円 | 336万6,000円 |
※上記は400万円超の物件についての速算式による目安です。国交省は、売買価格に応じた料率による計算方法を示しています。
つまり、5,000万円のマンションなら約171.6万円。
これが無料になれば、単純計算では171.6万円が完全無料になるということで大きな節約になりますね。
そもそも「仲介手数料無料」にできる仕組み
大きく分けると、次の4パターンがあります。
① 買主から仲介手数料をもらう
これが「売主側の仲介手数料無料」で最も注意したいパターンです。
コーラルはこのパターンを採用しております。
通常、
売主 → 仲介会社 ← 買主
という形で、仲介会社は売主・買主それぞれから手数料を受け取ることがあります。
これがいわゆる両手仲介です。
例えば5,000万円で売却した場合、
- 売主側:約171.6万円
- 買主側:約171.6万円
- 合計:約343.2万円
という収益構造になります。
そこで、
「売主様の仲介手数料は無料にします」
としても、買主から約171.6万円を受け取れるなら、仲介会社には収益が残ります。
この仕組み自体が違法というわけではありません。
しかし、問題になるのが次の囲い込みです。
国土交通省の資料でも、両手仲介では売主・買主双方から手数料を得られるため、仲介会社に両手仲介を行うインセンティブが生じることが指摘されています。
両手仲介では自社で買主を見つけることを優先し、他社からの購入申込みを制限する「囲い込み」が起きないか注意が必要です。レインズへの登録状況、他社からの問い合わせへの対応、広告掲載の範囲を契約前に確認してください。売却価格を下げて早く成約させる提案ばかりなら、手数料無料のメリットは薄れてしまいます。
② 不動産会社が直接買い取る
もう一つの「手数料無料」は、そもそも仲介ではないケースです。
コーラルは直接買取を行っていないため、このケースは採用していません。
例えば、
売主 → 不動産会社
と直接売却します。
これは「不動産買取」です。
仲介会社が売主と買主をつなぐ取引ではないため、仲介手数料そのものが発生しません。
ただし、ここには大きな注意点があります。
「手数料0円」と「売却価格」は別問題
不動産会社は買い取ったマンションを、リフォームなどを行ったうえで再販売し、利益を確保します。
そのため、一般的な市場仲介よりも買取価格が低くなることがあります。民間の解説では、買取価格は市場価格の7~9割程度が目安として紹介されることがあります。
例えば、
市場価格5,000万円
だったとして、
- 仲介売却:4,900万円で成約
- 仲介手数料:約168万円
- 手取り:約4,732万円
一方、
- 買取:4,000万円
- 仲介手数料:0円
- 手取り:4,000万円
なら、
買取の場合「手数料無料」の方が約732万円も手取りが少ない
ことになります。
したがって、
仲介手数料0円=最も安く売れる
ではありません。買取だから仲介手数料無料、このアピールには気を付けたいところですね。
③ 仲介会社が企業努力で無料・割引する
不動産会社が仲介手数料を割引する方法です。半額や定額、売却価格に応じた段階制などがあり、完全無料とは異なります。「最大無料」と表示されている場合も、すべての物件で無料になるわけではありません。対象エリア、マンションの種類、売却価格、専任媒介契約の締結など、複数の条件が設定されているケースが一般的です。。
不動産会社が、
- 広告費を効率化
- 店舗コストを削減
- IT・オンライン化
- 成約件数を増やして薄利多売
- 他サービスから収益を得る
などによって、仲介手数料を無料または大幅値引きするケースです。
この場合は、「無料だから囲い込み」とは限りません。
むしろ重要なのは、無料にした後も、他社から紹介された買主を積極的に受け入れるのか という点です。
たとえば、一定価格以上のマンションに限る、指定エリア内のみ対応する、専任媒介契約または専属専任媒介契約を結ぶ、契約期間中に他社へ変更しないといった条件があります。査定額ではなく、実際の成約価格を基準に無料条件が決まることもあるため、計算方法まで確認しておきましょう。
④ 買主側が買取業者の場合
少し特殊ですが、
売主 → 仲介会社 → 買取業者
という取引でも、売主側の手数料を無料にする会社があります。
仲介会社は買主となる買取業者から手数料を受け取るためです。
この場合、
売主の手数料0円+複数の買取業者を比較
という仕組みを採用する会社もあります。
ただし、ここでも、
「一番高く買う業者を選んでいるか」
が重要です。
一番注意したい「囲い込み」
マンション売却で手数料無料を検討するなら、ここが最大のポイントです。
例えば売主が、
「5,000万円で売ってください」
と仲介会社に依頼したとします。
他社から、
「このマンションを購入したいお客様がいます。紹介できますか?」
と問い合わせが来た。
本来なら売主に、
「購入希望者がいます」
と伝えるべきところ、
「現在、商談中です」
「契約予定です」
「内覧調整が難しいです」
などとして、他社の買主を断る行為が問題になります。
これが一般に囲い込みと呼ばれるものです。
東日本レインズによれば、専属専任媒介・専任媒介ではREINS登録が義務付けられており、売主への登録証明書交付も制度上 предусмотрされています。
したがって、
「仲介手数料無料です」
だけを見るのではなく、
「REINSに登録しますか?」
を必ず確認してください。
「無料」より重要な5つのチェックポイント
仲介会社を比較するときは、私は次の順番で見ることをおすすめします。
| チェック項目 | 確認すること |
|---|---|
| ① 売却価格 | 無料の代わりに査定価格を低くしていないか |
| ② REINS | いつ登録するのか、登録証明書をもらえるか |
| ③ 囲い込み | 他社からの買主紹介を受けるか |
| ④ 広告力 | SUUMO等への掲載、写真、動画、広告戦略 |
| ⑤ 手数料 | 無料・半額・定額・通常料金のどれか |
そして、もう一つ非常に重要なのが、
「両手仲介を狙う会社なのか?」
です。
「専任媒介だから囲い込み」ではない
ここは誤解しない方がいいポイントです。
専任媒介そのものが悪いわけではありません。
REINSへの登録義務や業務報告など、専任媒介には売主保護につながる制度もあります。(reins.or.jp)
問題なのは、
専任媒介+REINS登録+他社客を積極的に排除
という組み合わせです。
逆に、
専任媒介+REINS登録+他社客歓迎+積極的広告
なら、十分に合理的な選択肢になります。
マンション売却の「おすすめ比較」
| 売却方法 | 手数料 | 売却価格 | 売却スピード | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 通常仲介 | △ | ◎ | △ | 仲介会社選びが重要 |
| 仲介手数料半額 | ○ | ◎ | △ | サービス内容を確認 |
| 仲介手数料無料 | ◎ | ◎~△ | △ | 無料の理由を確認 |
| 両手仲介型無料 | ◎ | △~◎ | ○ | 囲い込みに注意 |
| 不動産買取 | ◎ | △ | ◎ | 買取価格が低くなりやすい |
| 買取+仲介会社 | ○~◎ | △~○ | ◎ | 複数社比較が重要 |
「手数料無料」と「手取り額」を比較する
売主が見るべき数字は、
売却価格 − 仲介手数料 − その他費用
です。
例えば、
A社
売却価格:5,000万円
仲介手数料:0円
→ 手取り約5,000万円
B社
売却価格:5,200万円
仲介手数料:約178.2万円
→ 手取り約5,021.8万円
この場合、
B社の方が約21.8万円手取りが多い
ことになります。
つまり、
「仲介手数料無料の会社」ではなく「最終的な手取りを最大化できる会社」を選ぶ
ことが重要です。
業者選びで確認したい質問
査定を依頼したとき、次の質問をしてください。
質問①
「仲介手数料無料にできる理由は何ですか?」
これに明確に答えられるか。
質問②
「買主は他社から紹介された場合でも受け付けますか?」
ここは非常に重要です。
質問③
「REINSには登録しますか?登録証明書をもらえますか?」
質問④
「SUUMOなどへの広告掲載はしますか?」
質問⑤
「御社のお客様ではない買主でも、条件が合えば普通に契約しますか?」
質問⑥
「査定価格ではなく、実際の成約事例を見せてもらえますか?」
この質問に対する回答を見るだけでも、かなり会社の姿勢が分かります。
マンション売却時の流れ・レインズの仕組み・売買契約決済まで
マンション売却の基本的な流れ
レインズの仕組み
売り出し開始~売買契約決済まで
STEP1 相場を調べる
周辺の成約事例・売出価格を確認。
↓
STEP2 複数社に査定依頼
できれば3社程度比較。
↓
STEP3 査定価格だけでなく販売戦略を比較
「いくらで売れるか」だけでなく、
「どうやって売るのか」
を見る。
↓
STEP4 媒介契約
一般媒介・専任媒介・専属専任媒介から選択。
↓
STEP5 REINS・広告掲載
他社にも物件情報を流通させる。
↓
STEP6 内覧・購入申込み
買主を探す。
↓
STEP7 売買契約
価格・引渡し条件などを確定。
↓
STEP8 決済・引渡し
残代金を受け取り、物件を引き渡す。
結論:「無料」だけで業者を選ばない
マンション売却で最も危険なのは、
「仲介手数料100万円以上が無料になります!」
という数字だけを見て会社を決めることです。
本当に比較すべきなのは、
①売却価格
②最終手取り
③REINS登録
④囲い込み防止
⑤広告力
⑥販売エリア
⑦担当者の販売力
⑧仲介手数料
です。
特に重要なのは、
「手数料をいくら払うか」ではなく「最終的にいくら手元に残るか」
です。
例えば、5,000万円のマンションで仲介手数料約171.6万円を節約しても、囲い込みなどによって売却価格が300万円下がれば、売主は結果的に約128万円損をする可能性があります。
したがって、理想的なのは、
「仲介手数料無料・低額」+「REINS登録」+「他社客を歓迎」+「十分な広告」+「適正価格で販売」
を同時に満たす会社です。
なお、国土交通省は仲介手数料について「上限」を定めているのであって、通常のマンション売買で必ず上限額を払わなければならないわけではありません。
「無料だから怪しい」のでも「無料だからお得」なのでもなく、無料にできる収益構造と販売方法を確認することが重要です。


